筆者のプロフィール

ヒノキと杉のスタッキングチェア

このブログでは、森林文化アカデミーの木工教員をしている筆者が、日常の実習や研究活動、日々思うことなどを発信しています。

  • 名前 前野 健(ken101ac)
  • 年齢 S56.2生まれ
  • 職業 岐阜県立森林文化アカデミー 木工専攻 准教授

経歴

20歳のとき森林たくみ塾で木工技術を習得

豊田高専というちょっと変わった学校の建築学科で建築について学んでいた中で、建築よりも自分の手の仕事で完結できるモノ作り=木工家具作りをしたいと考えるようになり、高山にある森林たくみ塾に入塾しました。

職業木工とは距離を置き、気ままなフリーターと野外活動

2年間のたくみ塾を卒業した後、木工とはしばらく距離を置くことになります。フリーターをしつつ、たくみ塾時代に関わるようになった「自然体験活動」を続けるため、愛知県内の野外活動ボランティアに参加するようになりました。この時期、幼児~大人までを対象としたキャンププログラムの企画や運営に関わることになります。

木工で起業。オーダースタイルのモノ作り工房を開業

引越し屋などでためた資金で倉庫を借り、機械をそろえて木工房を開業します。
オーダー工房というスタイルで、お客さんから注文を受けて家具や小物、道具などを作る、モノ作りの仕事を始めました。といっても、何のつてもコネもない若者の起業がそんなに簡単にうまくは行きません。この時期に意外と身近なところに地獄ってあるんだなということに気付きます。

スプーンキットの販売を始める

野外活動時代の友人に頼まれて木のスプーンの工作キットを作る機会がありました。これをウェブサイトに掲載したところ、少年自然の家の目に留まり以後、夏の定番アイテムとして毎年作り続けることになります。このスプーンによって、工房に安定した一定の売り上げを確保することができるようになりました。このスプーンキットは廃業時まで作り続け、小さな工房の運営を支えていました。

木のおもちゃ作りを始める

知人の出産祝いにラトル(赤ちゃんが遊ぶがらがら)を作ったのをきっかけに、オリジナルの木のラトルを作り始めます。ご縁がつながり、このラトルを日本橋の三越で取り扱ってもらうことになりました。これが自身の作るおもちゃが一定の評価と信用を得られた最初のエピソードになります。

木のおもちゃメーカーとして活動を開始

木のおもちゃメーカーとして屋号(ブランド)を立ち上げ、年1~2作の新作を開発しながらおもちゃを作り売り、時々工作のワークショップを店舗や子育て支援団体で行うようになります。近隣県で開催されるクラフトフェアにも参加しました。ここでつながったご縁で百貨店や観光地でのイベント販売にも参加するようになります。

オリジナル商品がグッド・トイに選定される

オリジナル商品としてデザインしたおもちゃがグッド・トイに選定されました(2点)。この表彰のとき、はじめて人前でスピーチという体験をします。人前で話をできるようになる必要性と重要性を感じた機会となりました。

国産材(地域材)を使った木のおもちゃ作りを始める

それまでのブナを主とするヨーロッパの木のおもちゃを模倣したモノ作りから一転、ユーザーからの要望を受けて岐阜県産材の杉、ヒノキを使って木のおもちゃを作り始めます。これが木育という活動と関わり始める第1歩となりました。

ぎふ木育の指導員としての活動

ぎふの木のおもちゃ研究会に参加していた関係から、ぎふ木育の普及活動に関わります。岐阜県内数カ所の木育広場設置に作り手として参加しました。その際に児童館や保育園などに行ってスタッフ向けの木育講座を行っています。

おもちゃの塗装技術で非常勤講師

製品の塗装や自身のウェブサイトで発信していた塗装技術の記事が目に留まり、岐阜県立森林文化アカデミーで塗装の授業に非常勤講師として呼ばれます。その時に、ちょうどおもちゃ開発に取り組む学生がいたため、おもちゃ作りの指導や助言を行うことになります。自身が駆け出しのころから、諸先輩方に教えられ支えられ続けられた経験から、今度は微力ながら自分が伝える側となれることに嬉しさを感じました。

地域材のおもちゃ開発にデザイナーとして参加

当時の日本グッド・トイ委員会(現 芸術と遊び創造協会)の依頼を受け、日本各地で企画されたウッドスタート事業におもちゃデザイナーとして参加します。九州、四国、中国地方など(主に日本の西半分)で地域材を使ったおもちゃ開発に関わります。今はウッドスタート公認デザイナーという位置づけで企画に関わっています。

2017年より森林文化アカデミー常勤講師

2017年の春より、木工専攻の教員として岐阜県立森林文化アカデミーに赴任することになりました。木工や木育の分野に関わる学生の指導を主にしながら、県内で求められている地域材の活用プロジェクトに関わったりや林業業界で求められている杉、ヒノキの活用方法を検証しています。

GOOD TOY AWARDに選考委員として参加

グッド・トイ2018の選定から、木のおもちゃ作りの専門家として参加しています。今までは選ばれる側でしたが、今度は選ぶ側としてグッド・トイに関わることになりました。

子どものためのナイフワークの普及活動

20期生、髙橋久美子さんの課題研究「子どもと保育士のためのナイフワーク」を担当。年長児を対象にしたナイフ技術やクラフトアイテムを一緒に考える機会を得ました。その後もフィールドワークの中で、子どもを含む初心者向けのナイフ教育の普及が必要と感じ、2022年から岐阜県内数ヵ所で初心者向けナイフ教室をスタートしました。

木工旋盤の指導

アカデミーに赴任したのを機に1から木工旋盤の技術について学び、以後、実習で学生の指導にあたっています。近年、学生が商品企画の実習で旋盤を使った作品を評価して頂いたり、卒業生が木工旋盤を生業とする仕事に就くことも出てきました。自身の旋盤技術は教えることに特化した基本的な内容にすぎませんが、これを武器にできる学生が育つ環境がアカデミーの木工専攻にはできてきています。

当ブログ「街と森の交差点」について

現在、自分が関わっている活動には学生の教育のほか、杉やヒノキを使った製品開発や地域材の活用事業、おもちゃ作りや木育分野のプロジェクト、子どものナイフワーク普及など、様々なものがあります。これらの活動や学び、知見のアウトプットをこのブログではゆるゆるとした言葉で発信します。

自身の活動のメインはアカデミーでの教育です。そのため、ここで発信スタンスは「ゆるゆる」です。記事の活動をより深く知りたい、聞きたいということがあれば、活動のフィールドまたはアカデミーに足を運んで頂ければと思います。また、諸々の条件が合えば講師として出向くことも可能です。

木育との関わり

立場上、自分と木育の関わり方、切り口は「ぎふ木育」の考えがベースにあります。ただ、深いところの自分にとっての木育は「木を通じて人や暮らしが良くなること、良く生きる=木育」が根っこになっています。国産材利用や地域材活用のための活動=木育という考え方とは少し方向性が異なっています。(その分野、方向性で仕事をすることもままありますが)

モノ作りのスタンス

元は広葉樹を使った家具作りから木工の道に入りましたが、アカデミーに来て以降、杉やヒノキといった針葉樹を扱うことが増えています。今はいかにして地域から出てきた樹木を有用な資源(木材)として活用するか?というテーマに取り組んでいます。具体的には、地域で実現できるミニマムな製材や乾燥といった、木工用材料を地域生産するためのパッケージ開発です。これは木工分野だけでは実現するのは困難な課題なため、林業や材料の専門の先生や岐阜県内企業にも協力を得ながら進めていっています。

専門分野としては玩具がそれにあたりますが、根底にあるのは「楽しい!」「面白い!」と感じる方向性の木工です。今はおもちゃも作れば家具も作っています。その時々、求められるシチュエーションにあわせて技術や素材を使う作り手として活動をしています。街(人)と森が良い関係につながる1つの方法として木工やデザインというものを深めたいと考えています。

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