
乳幼児玩具(0~3歳未満児を対象にした玩具)は2025年12月25日から、子供用特定製品として取り扱われます。そこで、おもちゃの作り手が、どのようなことに対応しないといけなくなるのか・・?今回は、事業者の登録と障害保険の加入義務についてのお話になります。
※この記事内で話題にする「乳幼児玩具」は0~3歳未満児を対象にした玩具のことを指しています。経産省の資料で記載されている「乳幼児用玩具」と同じものを指しています。
誰が事業者登録する必要があるのか?
今回の規制のルールで事業者登録が必要になるのは「製造事業者(作る人)」と「輸入事業者」です。販売のみを行う「販売事業者(小売店など)」に関しては登録する必要はありません。
一方で、販売事業者は、子供PSCマークを確認して乳幼児玩具を販売する義務があります。子供PSCマークの無い乳幼児玩具を販売したり、販売の目的でお店に陳列することは違法になります。
細かい部分のお話ですが、企業やメーカーからの依頼で乳幼児玩具の『デザインのみ』を請け負うデザイナーについては、「事業者登録の必要は無い」という見解を2025年10月29日に岐阜県で開催された説明会の個別相談でお聞きしています。
乳幼児玩具の製造事業者は国への登録が必要になります
個人であっても企業であっても、いずれも同様に、2025年12月25日以後は乳幼児玩具の製造又は輸入事業を行う場合、国への登録が必要になります。販売金額がいくら以上であるだとか、製作数がいくつ以上であるだとか、そういった部分での区分けはありません。『事業』として乳幼児玩具を製造したり、海外から輸入するという場合は登録しないといけなくなるのです。
製造事業者に関しては登録内容は主に3つ
- 事業体名
- 取り扱う製品の型式の区分
- 損賠賠償責任保険の加入
になります。
事業体の登録先は?登録する内容は?
事業体を登録するさい、個人事業主である場合は氏名及び住所(※記載するのは住民票の表記どおり、屋号は不可)、法人の場合は名称、住所及び代表者の氏名(※法人登記の表記通りに記載する)を登録します。
さらに、玩具を作る工場の名称と所在地も記載する必要があります。
届出先は、事業所や工場がある地域を管轄する経済産業局になります。中部5県(愛知・岐阜・三重・富山・石川)であれば、中部経済産業局(中部経済産業局長あて)となります。
事業所が複数エリアにまたがる場合は経済産業省へ経済産業大臣あてで、登録手続きを行うことになります。
※事業体が「ブランド事業者」に該当する場合は、事業所の地域に寄らず経済産業省あてに登録を行います。
取扱う製品(特定製品)の型式区分
事業者登録を行う際に、何を扱っているのか(作っているのか)を型式区分の枠にはめて登録する必要があります、、が。これが少しわかりにくいのです。よく誤解をされるのが登録は製品ごとではない。製品の1つ1つを登録する必要はないという点です。
以下に解説してみようと思いますが、正直うまく伝えられる自信も無いので、よくわからないという場合は、地域エリアを管轄する担当窓口(製品安全室)に問い合わせてください。
特定製品の分類は「乳幼児玩具」
まず、3歳未満児向けの玩具は特定製品の分類としては「乳幼児用玩具」になります。
この「乳幼児用玩具」として登録する際に、その製品がどんなタイプの製品なのかを、5つの要素について、区分分けをしていきます。
5つの要素ごとに、どの区分に該当するかを確かめます
乳幼児玩具で登録時に必要になる型式区分の要素は
- 種類
- 可動部・駆動部・発射体
- 磁石・磁性部品
- 音を発する構造
- 熱源
という5つがあります。
これらの5つの要素について、自分が作る製品がどのように当てはまるのかを、登録の書式(下の表の(1)~(3))があるので、これにチェックを入れていきます。
| 種類 | (1)主として触るもの |
| (2)主として体を支えるもの | |
| (3)その他のもの | |
| 可動部・駆動部・発射体 | (1)含むもの |
| (2)その他のもの | |
| 磁石・磁性部品 | (1)含むもの |
| (2)その他のもの | |
| 音を発する構造 | (1)含むもの |
| (2)その他のもの | |
| 熱源 | (1)含むもの |
| (2)その他のもの |
この表にチェックを入れる作業ができれば、型式の区分の登録はOKです。
もし、型式の区分の組み合わせが異なる別製品があれば、表の枠を横に追加して登録する型式区分を追加します。
この型式区分の追加は、後から「変更届出」を提出することでも対応できます。
注意!型式区分が同じ別製品を作る場合、変更届出は不要です
たとえば、木の歯固めを作った場合、それがお花の形であっても、動物の形でも、ハートの形でも、上記の表でチェックを入れる型式の区分は同じになります。この場合、各アイテムごとに型式区分の登録申請は必要なく、最初に1回、型式区分を登録しておけばOKです。
一方で、『木の歯固めの中に鈴を入れて音が鳴るようにしました』という改良品を新たに作る場合は、「音を発する構造」の型式区分が変わります。このような場合は、変更届出を出して、型式区分を追加する必要が出てきます。
1度、この型式区分を提出したら、同じ仕様の製品を作っていく分には、再度の登録手続きは不要です。廃業時や事業者の変更があった場合には、それぞれに別に届出を出すことになります。
その他、ちょっとわかりにくいかな・・という部分
可動部:関節構造や折り畳み(丁番やヒンジ)の機構があって、手を挟む要素になる。ビニル人形やぬいぐるみなどの「ぐにゃ」っと曲がる部分は該当しない
駆動部:製品の動作や運動を生み出す機構。モーターやはずみ車などが該当
磁石・磁性部品:磁石が内蔵されたスピーカーやモーターなどの電子部品については(2)その他のもの に該当する
というところでしょうか・・木のおもちゃの場合は該当なし(その他のもの)が多いかなと思います。
損害補償制度への加入
事業者の届け出を行う前に、事業者は消費者に損害を与えた場合にそなえて、損害賠償責任保険に加入する必要があります。規定として、被害者1人あたり1000万円以上かつ、年間3000万円以上を限度額として補償する保険に入らなければいけません。
特に保険業者の指定は無く、地域の商工会に加入することで団体割引が使えたり、保険契約には色々な形があります。個人や小規模な事業体であれば、月額数百円から数千円の負担になるのが一般的なようです。事業者登録の届出の際に、保険加入内容のわかる書類の写しの添付が必要です。
もし届出に誤りがあったら・・
型式区分についての届け出に誤りがあった場合、数年に1度、実施される立ち入り検査で、変更届出の提出を求められることがあります。
届出はインターネットから
事業者登録や型式区分の届出は保安ネット(インターネット)または書面での提出ができます。
保安ネットは先にアカウント登録でGビズID(gBizID)というサイトに飛ばされますが、そういう仕様なので受け入れましょう。
手続き画面を見ると、あまりに多くの手続きがあり、あわわ、、となりますが、乳幼児玩具の事業者登録については「新規手続き」→「製品安全4法」→「消費生活用製品安全法」→「所管の経済産業局(中部圏であれば中部経済産業局)」といった具合に項目を選んでいけば、登録情報の入力に進んでいくはずです。申請に必要な情報については、ほぼほぼ上記の保安ネットポータルの中にリンクが貼られています。
ご不明な点はオンライン上のマニュアルを見たり、担当窓口※に問い合わせながら進めていくと良いと思います。
※保安ネット ヘルプデスク 電話:050-2018-8381 受付時間:平日9時~18時
書面での提出は
経済産業省のサイトの至るところにウェブからの申請をするように指示がありますが、書面での事業届出を出す場合は、以下の3つの書類を準備します。書式は経済産業省の消費生活用製品安全法のページからダウンロードします。
- 様式第3 特定製品製造(輸入)事業届出書
- 別紙1 特定製品の型式の区分
- 別紙2 損害賠償措置の内容
※上記の様式第3に別紙1、2の書面も含まれています。
記載例はこちらの【令和6年法改正対応版】消費生活用製品安全法 法令業務実施ガイド の42ページを参照してください。別紙1の型式区分については、型式の区分の組み合わせを一覧にした表を作成して添付します。別紙2については、説明の記載と合わせて、損害賠償責任保険の内容を示す保険契約の書面(コピー)を添付します。
事業届出の例外『ブランド事業者』
特定製品の事業者登録の中で「乳幼児用玩具」に限り、製造事業者の届出を免除できる例外があります。それが『ブランド事業者』という事業形態です。これは法令業務実施ガイドの中で以下のように定義されています。
自社のブランドを前面に出して商品を流通させている企業のうち、以下の要件を全て満たす事業者は、委託先の製造/輸入事業者に変わって製造又は輸入の届出を行うことができる。その場合、各種義務を(委託先に代わって)履行する必要がある。
- 国内に所在する事業者であること
- 製造を委託する関係にあること。(関節委託を含む)
- 製品の設計を自社の責任で行っていること。
- 製品の検査を自社の責任で行っていること。
- 本法の全ての義務・命令の対象者になることを理解していること。
- 自社の名称・商標で製品を流通させていること。
このようなブランド事業者として乳幼児玩具の製造を行う場合は、委託先の製造事業者とブランド事業者間で取り交わした契約書の写し①とブランド事業者が消安法における全ての義務・命令の対象となることを理解している旨を示す代表者名義の文書②※を事業届出の際に提出します。
※②の文書の形式は【令和6年法改正対応版】消費生活用製品安全法 法令業務実施ガイドの20~21ページに記載例があります。
(余談)
子供PSCマークの表示ルールでは、製造事業者を明記する必要があります。一方で、製造を外部委託しているブランドは、ブランド名と異なる製造事業者名が商品に記載されるのをマイナス要素と捉える場合もあります。
作り手にとっても、普段は家具を作っている工場が、たまたまその月だけ、委託仕事で乳幼児玩具を作った場合に、わざわざ事業者登録や検査の手続きを自社で行う~というのはあまりに手間とコストがかかってしまいます。
このブランド事業者という仕組みは、うまく活用することで、ブランド側、作り手側の相互にメリットのある業務提携ができるというふうに考えられます。
変更の届出
登録内容に変更があったときは、届出をしないといけません。ただし、軽微な変更に関しては、他の変更申請に合わせたタイミングでも届出はOKです。
すぐに変更届出が必要なこと
- 事業名称の変更
- 本社住所の変更
- 製造工場の変更(追加、削除、所在地の変更)
軽微な変更にあたるもの(ついでの届出で良いこと)
- 法人代表者の変更
ちなみに、変更の届出はオンラインからも可能です。
・・・・
今回の事業者登録について、書き始めは簡単に終わるかな・・と思ったのですが、意外と長くなってしまいました。しょうがないのかもしれませんが、行政に提出する文章は慣れていないとわかりにくい側面があります。今回はそこを少し踏み込んで解説にチャレンジしてみました(それでもわかりにくい部分はごめんなさい!)。
次は規制の核心部分とも言える自主検査についてです!

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