モノ作りワークショップにおける木っ端とアートの相性の良さ

今年度、新しく「木っ端(こっぱ)工作」というワークショップをはじめました。
木に関わる仕事をしているところであれば、いたるところで同じ名前で行われているワークショップかもしれません。実はこの木っ端工作というものに、今まで自身はあまり魅力を感じていなかったんです。

というのも世間でやっている木っ端工作を見てみると、廃材という材料の制約から、出来上がる作品が大味なものであったり、作業環境や道具が今一つそろわずに、思い通りの形が作れない・・などなど。自分にとってはネガティブ要素が多く感じられたんです。なおかつ他所でもやっていることであれば無理にそれに取り組む必要も無いというスタンスで、これまで木っ端工作というものはやってこなかったんです。

しかしけれどもですが、このたびゼロ予算でワークショップを企画していかなければいけない状況が降ってわきました。そこで目についたのが工房の端材です。工房のゴミ捨て場にたまった木っ端くらいしか無料で調達できる材料が無かったワケです。さあ、この木っ端たちをどう料理しようか?しばし考えた後、実施したのが、今回紹介する木っ端工作です。

少しの工夫から、木っ端が思った以上にアーティスティックな素材に変貌したことに驚いたというお話です。

木っ端が工作やワークショップに使われるワケ

木に関わる仕事はたくさんあります。木を切る伐採業、丸太を板にする製材業、板から家や家具を作る大工さんに家具屋さん、自分のような木工職人もその1つです。それらの現場では、大なり小なり木の端材「木っ端」が出ます。この木っ端の使い道はせいぜい燃やす程度のもので、それができない事業所では、廃棄物として有料で捨てています。

約半分は捨てられる木

伐採した木

山で切られた木は、その全てが建材や家具になるわけではありません。

例えば根っこの近くや、細い先端や枝の部分はモノ作りには使えなかったり使いづらかったり。そんな理由で値段が付かないために山に捨てられることも普通です。

丸太を板に挽くとき、皮の部分を残したままだと虫が食べたりカビが生えたりするので、大抵は切り捨ててしまいます。また、芯を含んだ板はそこから割れが入るため、芯まわりも製材時に切り捨てることがあります。

では家作りや家具作りの現場ではどうでしょう。市場に出回っている木材は2mや3mの決まった長さの規格品です。そこから必要な長さに切りだしたり、設計図に応じた成形をするため、大小の端材が出てきます。木工を学んだ時に言われた言葉を借りると、木工は「引き算のモノ作り」素材の木を切ったり削ったり(引き算)して、ねらった形を作ります。作るモノによって廃棄される部分(端材)の量は増減しますが、約半分は捨てられる木とも言われます。

木っ端がワークショップの材料に向かない理由

板の端切り

木っ端は木に関わる現場のいたるところで出てくる廃棄物です。その捨てられる理由は実にさまざま。大きさが規格に満たない。色が悪い。節が入っている。白太(しらた)や虫食いが入っているなどなど・・。木に関する価値観はいろいろですが、見た目だったり性能だったりで不具合がありはねられたモノなので、そんなにいい材料はそんなにありません。

また、木っ端を保管しておくのも、事業所にとってコストになります。なので大抵は木っ端など保管することなく廃棄してしまうというが一般的です。欲しいタイミングに欲しいサイズ、欲しい樹種の木がそろうなんていうことはなかなか無いのです。

そんな事情があってか、木っ端工作は作品の完成形があいまいなままに行われることが多い気がします。自由で想像力が生かせるとも言えるかもしれませんが、ゴールが定まらない工作になりがちです。

今回の木っ端工作で工夫したこと

今回、そんな木っ端を材料にしたワークショップを企画するにあたり、取り組んだのが木っ端の材料化です。工房から出てきた木っ端をそのまま工作の材料としてならべるのではなく、いくつか加工をすることで、作品作りがしやすく、またワークショップの運営にも適したモノにしました。その作業が「木っ端のカット」そして「磨き」です。

木っ端をさらに切る

今回のワークショップの材料で用意した木っ端は、工房から出た端材を拾い集め、それをさらにカットしています。小さいものは1辺が5㎜程度のキューブ型のもの、また、大きなものでもせいぜい3~4センチ程度のサイズです。これらのピースは全てバラバラのサイズ、形にカットされていて、参加者にはそれらの中から好きなモノを選びながら作ってもらいます。1つ1つサイズも形も違う~というとなかなか大変そうですが、適切な木工機械と角度定規をいくつか用意することで、安全に簡単にパーツを作ることができます。

木っ端のカドを取る

カドを取った木っ端

細かく切り分けたパーツは、今度は「ガラ箱」と呼ばれる自作の道具を使い、磨いてカドを取ります。そうすると木っ端の表面はツルツルのスベスベになり、廃棄物と呼ばれた面影はなく、ステキな工作材料に変身します。磨いた木の手触りは異素材には無い気持ちよさなので、それをワークショップで体験してもらうのも、この作業を行う良さと言えます。

ガラ箱とは福引で回すガラガラのような合板で作った木箱で、その中に紙やすりを貼ったもの。この箱に木っ端を入れてモーターや木工旋盤で数時間、ゆっくり回すと木はツルツルに磨かれます。

作品たち

そんな材料を準備し、ボンドと釘と穴あけ用の小径ドリルを使って作ったのが以下の作品です。

木っ端のワニ

こどもの素直なアートセンスで作った作品

木っ端の人形

この人形は木の色の違いを活かしています

着色したパターン

色を付けたり、絵を入れたりしても素敵です。

木っ端アート、ウサギのピョン

手のひらサイズの木っ端のウサギ

いかがなものでしょうか?

ワークショップの出口はアクセサリーまたはマスコット作りとして作例を用意することで作業の方向性を作っています。また、パーツ1つ1つの質を上げることで、作品としてのクオリティを1段上に引き上げています。

準備に若干手間はかかりますが、過剰というほどの作業ではありませんし、何よりも無料で行うワークショップだからクオリティは求めないというのも自身のスタンスとは異なります。結果的に参加者の集客と満足度につながる、評価の高いワークショップにすることができたと思います。

この木っ端工作ワークショップ、今は月一開催のセラパークあそび隊!の活動でときどき行っています。ご興味を引かれましたら、ぜひ1度ご参加下さい。

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