予算ゼロから木のあそび場を作った取組み(地域材の遊具開発その1)

セラミックパークMINO木のあそび場 モノ作りのこと
セラミックパークに木のあそび場ができました。

セラパークあそび隊!のブログにもアップしましたが、岐阜県多治見市のセラミックパークMINOに木のあそび場ができました。場所は岐阜現代陶芸美術館入り口の左横。約20㎡ほどの木の空間で親子で遊んだりくつろいだりできます。

この木のあそび場作りのきっかけは、1年前に美術館学芸員の林さんが「美術館に来た親子のくつろげる木のあそび場が欲しいんです」という相談を森林文化アカデミーに持って来られたことでした。ところが、あそび場作りのための予算はこの段階ではゼロだったんです。

そのような状況から1年後に、嘘のような立派なあそび場ができあがりました。この1年間のプロジェクトをかいつまんでご紹介したいと思います。

なぜ、木のあそび場が必要だったのか?

セラミックパークMINO

広く清潔で快適な空間ではあるが・・

セラミックパークMINOは岐阜県多治見市にあるイベントや国際会議などを行うためのメッセ施設です。山の地形と緑の中に建物を埋め込んだような場所で、美術館はこの施設の中にあります。メッセエリアや屋外にも現代陶芸のアート作品がレイアウトされているのも特徴です。

美術館は子どもから大人までを対象にアートに親しんでもらうイベントを積極的に企画しています。一方、建物内には子どもが声をを出してはいけないような空気感があり、お母さんが作品鑑賞をしているあいだ、お父さんは子どもを外へ連れ出していく現状。どうしたら親子連れが館内でくつろいでもらえるか?気兼ねなくアートに親しんでもらえるかが課題になっていました。

そんな中、試しに岐阜県が貸し出しをしている木のおもちゃと無垢材のマットを使い、期間限定の木のおもちゃスペースを作ったところ、これが親子連れにとても好評でした。木の空間があることで、親子の居場所が生まれたのです。

セラミックパークはシデコブシの群生地

セラミックパーク内の遊歩道には貴重なシデコブシの群生地も

セラミックパークの内外を見学して感じたのは、遊歩道や明るくてきれいな館内は、親子連れが過ごすのにとても良い施設だということ。そのために「木のあそび場」を作ることで、親子がこの環境を使う仕組みにすることは意義があることだと思いました。こうして、岐阜現代陶芸美術館とセラミックパークMINOと協力して、木のあそび場作りを進めていくことになりました。

セラパークあそび隊!の結成

セラパークあそび隊!バナー

木のあそび場作りを進めることは決まりました。

しかし、当初より自分にはこの段階ですぐに木のあそび場を作って良いのか?という迷いがありました。というのも、この施設にあまりに利用者の姿が見当たらなかったからです。

あそび隊!のイベント

セラパークあそび隊!のイベントを企画し毎月開催

そこでまず、セラミックパークMINOと現代陶芸美術館を日常的に多くの人が楽しめる(遊べる)場にすることを目的とした、集客と施設のファンづくりの活動を始めることにしました。それが「セラパークあそび隊!」です。

このボランティアグループは美術館の林学芸員とセラミックパークを管理する財団法人の長江さん、そして自身と学生の庄司さんが発起メンバーとして立ち上げました。この活動を通じて、一緒にセラミックパークで活動する地域の仲間を得るなど、あそび場作りの下地作りが行われました。この実践と成果については、庄司さんが課題研究としてまとめています。

木育とデザインによる地域活性の可能性―セラミックパークMINOでの実践を通じて―

企業と連携したあそび場作りへ

ナイス株式会社担当者との打ち合わせ

ナイス株式会社担当者との現地打合せ

あそび隊!の活動では、資金集めの募金を行っていましたが、それだけで資金を集めるのは無理でした。そこで取り組んだのが企業との連携プロジェクトです。

昨年の夏に岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムに仲介して頂き、杉の表層圧密材Gywood(ギュッド)を使った製品開発と普及に取り組んでいたナイス株式会社との連携が実現しました。その内容はセラミックパークを製品モニターの場とし、あそび隊!が遊具の企画開発と試作品製作で協力するというもの。このプロジェクトはそれぞれが金銭や物品を一方的に提供するのではなく、相互にリソースを出し合いながらも、お互いがメリットを得られるという内容でした。

セラパ木のあそび場設置

遊具設置はナイス、コンソーシアム、あそび隊!が協力して行いました。

遠回りのようで近道だった木のあそび場作り

当初、木のあそび場作りに際し、補助金を使ったらどうか?岐阜県が持っている古いイベントで購入し使われなくなった木のおもちゃを使ってはどうか?という案もありました。これらの木のおもちゃを活用し、アカデミーのネットワークや資材を使って什器を準備して木のあそび場を使ってしまえば?ということです。

セラパの木のあそび場作り

与えられた場ではなく自分たちで作ったということが重要

しかし、スタートから援助に頼り、上から下に与えられるように得た場所を、本当に長く大切に使っていくでしょうか?もちろん、アカデミーだって予算無しに依頼を受けるというのは無理があります。

今回、あそび場を作りで目指したのは「施設や地域の人たちが自分たちの手で維持し活用していく場」を作ることです。セラパークあそび隊!を結成し、愛着を持って関わってくれる人を募ったのも、自分たちの手であそび場を作り上げることで、将来的なメンテナンスや維持管理の技術を体験する仕組みにしたことも「自ら主体的に作り上げていくあそび場なんだ」というマインドを培うプロセスにしたかったからです。

箱物は将来的にどこかで維持や管理の「負担」が生まれます。それをクリアするための下地作りを箱作りを通して行おうというのが、今回のあそび場作りのコンセプトであったとも言えます。

大事なのは強い当事者意識と協力し合うマインド

あそび場設置記念写真

あそび場設置の記念写真

今回、ここまでプロジェクトがトントン拍子に進んだのも、セラミックパークMINO、岐阜現代陶芸美術館の施設側の理解と寛容さがあったからこそでした。ナイス株式会社の担当の方々も、無理なお願いに対応して頂く場面が何度もありました。そしてコンソーシアムの調整があって、初めて実現できたプロジェクトだったと言えます。

遊具の設計や製作では、自身が作業を負う部分も多くありましたが「作り手のスキルを活かしてできること」を、いかに社会貢献につなげるかというのは、自身の教育、研究活動のテーマでもあります。そういった意味でも、今回の実践から得られた経験値は大きかったと思います。必要になるのは、いかにプレイヤー達が強みを出し合い、強い当事者意識をもってプロジェクトに向かえるかということだと思います。

最後に

このあそび場作りのプロジェクト紹介「どのようにしてあそび場作りが実現したか」についてのお話はここまでです。次からは、あそび場設計のこだわりポイントを紹介していきたいと思います。
お楽しみに!

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