今年度も、市内の保育園に協力して頂いて、年長児を対象にした月に1度のナイフクラフトの教室を実施しています。6月に第1回を行い、7月、9月と、ここまで3回を行いました。子ども達の技量には多少の個人差があるものの、月にたった1度のナイフ教室でも子どもたちは目覚ましい上達を見せてくれます。
1回目、2回目のナイフ教室の様子
6月に最初に行ったナイフ教室では、木の枝の樹皮を削って、ネームスティック(ひも付きの名札)を作りました。この日は、初めての道具に「慣れる」ことと、木を削る「楽しさ」を感じてもらうため、園長先生の持ち山から分けて頂いた切りたてのヤマザクラを削りました。ヤマザクラの樹皮は柔らかく削りやすいため、シュルシュル!スパッ!と削れます。子ども達は手にした枝の皮を見る見るうちに削り落として、初めてのナイフ体験は「思っていたよりも簡単にできる!」という反応でした。
7月に取り組んだアイテムは動物作りです。これは枝の先端を先細に削って動物の顔を作り、小枝の脚や樹皮の耳を取り付けて完成させます。この2回目のナイフ教室に選んだ材料はアラカシの枝。これは切りたての生木でしたが、木偏に硬いと書いて「樫(カシ)」と読ませるように、アラカシはかなり硬い木です。大人の指くらいの太さの枝とはいえ、子どもたちの力だけでは、なかなか手ごわく苦労している様子で、大人に手伝ってもらいながら動物を完成させていました。
3回目(9月)のナイフ教室の様子
8月はお休みして、9月に行ったナイフ教室では、ウワミズザクラを使って「魚」を作りました。魚は頭としっぽをナイフで削り出すため、動物よりもさらに削る量は増えて難易度は上がります。
一通りの作り方を伝えたあと、さっそく子どもたちは枝を削り始めたのですが、驚いたのはそのナイフを扱う慣れた手つきでした。半数の子ども達は大人の手助けをまったく借りず、自分たちが作りたい形を目指して、(でも、時々「手が痛いよ~」という声も聞かれましたが)自分の力で魚の形を完成させることができたのです。
昨年のナイフ教室に比べて、今年の年長さんの方がナイフへの慣れや技術の習得は早く感じます。その理由として、今年の子達は、昨年の年長さんがナイフを使う様子をいつも見ていたことや、子どもの体格や特性に合わせた道具やナイフを使うための環境作りのノウハウが今年はほぼ出来上がっていたのは大きかったかもしれません。さらに言えば、1か月ぶりであっても、子ども達の技術が目覚ましく成長していくことは、実は昨年度のナイフ教室の実践でもわかっていました。それくらい、5~6歳児の吸収力には目覚ましいものがあると感じています。今回、子ども達がナイフが上手に使えた理由の1つには、7月に硬いアラカシを何とか削り上げようと、それぞれに試行錯誤をした反復の経験が活きているのだろうとも思います。
幼少期の伸びる力
3回目のナイフ教室では、私達、大人の方が子ども達の成長に驚かされる形となりました。それくらい、子ども達は自然に感覚的に、道具の使い方を理解して使いこなせるようになっていました。「当初はナイフなんて大丈夫かしら・・?って思っていたけど、今日はもう、何の心配もなく見守ることができました」という言葉が保護者から聞かれるくらいにです。
このナイフ教室では、1つ1つの注意事を事細かに説明することはせず、まずは大きな危険を避けるための3つの約束のお話だけをして、子ども達にはナイフを使ってもらっています(これは、子ども達の集中力を削がないため、という意味もあります)。子ども達がナイフを使っているときは、その様子を観察しながら、どのような言葉をかけるべきか、どのようにサポートをするかを考えて個別にその時々のサポートをするようにしています。でも、今回は「見守る」だけで、子ども達がどんどん技術を身に着け、作ることを楽しむ様子を見ることができました。
ただ、そんな大人の感心など、子ども達は我関せず、サクサクっと自分の作品を完成させると、今度はグラウンド遊びに関心が向かったようで、魚を完成させた子達は、ささーっと外に走り出していってしまいました。子ども達にとっては、いつもの外遊びも月に1度のナイフ教室も平たく同じ日常ごとといった感じのようです。それくらい自然に、子どもがナイフと触れ合える距離ができていくのが良いのだろうと思います。
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