先の日曜日に、多治見のセラミックパークMINOでワークショップを行ってきました。内容としては、木っ端を使った工作体験や杉のスツール作り、木のおもちゃの遊びブースなど。1つ1つのプログラムで見ると「ああ、いつもの木育のやつね」といった趣ですが、実はそれら個々のプログラムは大きな作品(目的)を完成させるための1つのピースという位置づけになります。
木育は手段であり、ツールでもある
木育という言葉が使われだして、もうかなりの時間が経ちます。一方で、木育とは何ぞや?という質問はいまだ多く聞かれ、木育という言葉の認知はまだまだといったところでしょうか。今回は自身の活動を振り返りながら木育とはどういうものかを説明してみたいと思います。
(注意!)
木育という言葉は使う場面や使う人によってかなり内容が異なる場合があります。ここではあくまで個人の活動、フィールドにおいての木育の解説と捉えて下さい。
木使い運動につなげる木育
まず、木育という言葉についてお話をしたいと思います。
繰り返しになりますが、木育という言葉は使う場面や使っている人によって意味合いがかなり異なります。
例えば木づかい運動のような場面で使われる木育という言葉は国産の木材や森林に関わる活動のこと。それも主に、国産材や地域材を使っていくための普及や教育の活動に対して「木育」という表現が使われています(主に林野庁が使っています)。
自分が関わっている事業で言うと、地域材を使った木のおもちゃ作りなどがこれにあたります(全てではありませんが)。
「良く生きる」ことにつなげる木育
ここ数年、自身が意識的に取り組んでいるのが「育ち」や「気づき」につながるようなアプローチを木を通して行う活動。体験を通して「良く生きる」ことにつなげる木育です。木でモノを作ったり、山に木を見に行ったり、木材のお話を聞いたり。それらをすることで、人の成長や生活の楽しみやストレスの解消につなげるなど、社会や地域を良くすることにつなげるアプローチという木育です。
例えば、現在、セラミックパークMINO、岐阜現代陶芸美術館をフィールドに行っている木育活動がこれにあたります。木を通じて人が集まり、木を通じて楽しい時間やフィールドの気持ちよさを感じ共有する活動です(セラパの活動の目的は実はこれだけではありませんが・・ )。
これもれっきとした木育ですが、木づかい運動のケースとは異なり、特に「木をたくさん使おうぜ!」というようなメッセージ性はありません。
木育の「育」は教育という意味もありますが、どうも上からな感じがするので「教育」という言葉はあまり使わず、自分は木育のことを「よく生きるための活動」という言い方をしています。感覚的にもその方が自分にはしっくりきます。
評価軸の異なる2つの木育
木づかい運動における木育は、どれだけたくさんの地域の木や国産の木が使われたかで評価されます。活動の目的、対象は「木」にあります。対して、良く生きるための木育は、どれだけ人や社会が良い方に向かったかで評価されます。活動の目的、対象は「人」になります。
最近の自分の木育の方向性
自分に来る依頼は、自身のスキルが作り手ということもあり地域材を使った木のおもちゃ作りなど「木づかい運動」的な内容のことが多いです。一方で、木のモノ作りの過程の中で、地域のつながり作りや子育て環境に木の強みを取り入れることで、より良い暮らしにつなげるような提案やアプローチ(よく生きる木育)にも取り組んでいます。自身の方向性としては木育のアプローチをゆるやかな地域活性化事業だととらえています。
例えば、地域の木を使って木のおもちゃを開発する事業では、木材生産者や作り手を繋げるだけでなく、おもちゃの使い手である保育者や子育て支援者とも連携しながら、おもちゃの作り手と使い手がつながりを持てるようなネットワーク作りを大切にしています。
身近な木を使う必要性も今は重要であり、そのための活動は急務です。同時に、木がもつ力も活かしながら、木や木のモノを使うユーザーがより良く暮らせるような場づくりも求められています。自分はこれらを同時に行うような欲張りスタイルを身上としています。
木育のための木育っていうのはウチはやっていません
いろいろな場面やフィールドで「木育」というものに関わらせてもらっていますが、いずれも課題解決のための手段として木育という手法を使っています。なので、活動の目的や対象はあくまで人や地域などになります。
1つ活動の例をあげましょう。自身の木育の活動で木っ端を使って工作をすることがあります。
しかし、工作をすること自体は活動の目的ではなく、木育の活動はあくまで手段です。木を切ったり磨いたりすることを通して道具を上手に使えるようになったり、親子で協力しながらモノを作り上げるプログラムを組み立てることで、家族のコミュニケーションを育んだり、特定の場所に人を集める仕組み作りといったこと。こういうのが木育と言えます。
木は育みのツールとして他の素材には無い優れた働きをします。今、木育という活動が注目を浴びているのは、この木の特性と時代のニーズが一致して来ているからでは無いでしょうか。
まとめ
木育という言葉が意味するところはフィールドやその人の考え方、取り組む地域の課題によって毎回異なり、さまざまなやり方、アプローチの方法があります。それらをあえて大きく2つに分けるとすれば、「地域の木を使うこと」や「木を使って人や社会を良くする活動」と言えるでしょう。
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