
皆さんは2025年の12月25日から、国(経済産業省)が『乳幼児玩具に関する新たな規制』を始めるということはご存知でしょうか?
ちょこちょこと、この規制についての話題が上がるようになってきたのは1年ほど前のこと。この規制について調べてみると、私を含めた木のおもちゃの作り手にとって、少なからず影響がありそうだということがわかってきました。
岐阜県では「ぎふ木育」の推進と並行して、長く県産材での木のおもちゃ作りをサポートしてきた経緯もあり、県の林政部が動く形で、先の10月29日に、中部圏でこの規制を管轄している中部経済産業局から担当者を招いて、特に木のおもちゃのメーカー・販売に関わる方を対象にした規制の説明会を開催しました。
ここからは数回にわたりまして、この『乳幼児玩具に関する新たな規制』と、それによって、今後、木のおもちゃの作り手にどんな影響が出てくるかについて、自分なりの言葉になってしまいますが、解説をしていきたいと思います。
(私は法律の専門家ではありませんし、実際の規制に際して、事例ごとの判断は経産省にゆだねられます。個別の質問を自分に送って頂いても、確約できる回答はできませんので、不明な点はお近くの経産省窓口(中部圏であれば中部経済産業局の製品安全室)へお問い合わせ下さい)
そもそも、この規制で何が変わるの?
まずはざっくりと、この規制がどんなものかについて、簡単に説明しましょう。
子どもがおもちゃで遊んでいる中で事故が起きてしまうことがあります。例えば誤飲による窒息であったり、尖った部分に触れたためのケガであったり、その内容は様々です。
これらの事故は場合によっては、子どもの重大なケガや死亡につながるようなケースも含まれます。
今回の規制は、特に重大な事故につながりやすい傾向のある「乳幼児(0~3歳未満児)向け」の玩具に対して、一定のルール(規制)を設けることで、危険な玩具の流通を無くそうとしています。
基準を満たさない乳幼児玩具は流通できなくなる
新たな規制が始まると、乳幼児向け玩具(0~3歳未満児を対象にした玩具)は子供用特定製品という位置付けとなり、法律※で国が定めた技術基準に適合することが義務付けられます。
※消費生活用製品安全法(通称、消安法)
この技術基準※は10の項目があって、玩具の強度や素材に関する基準があったり、玩具のわかりやすい部分に製造者情報の表示が義務付けられるなど、細かなルールがあります。
そして、12月25日以後、これらの技術基準を満たしていない製品を売り買いすることは原則禁止(法律違反)となります。(※ただし、一部例外もあり)
事故に対する補償が義務付けられる
12月25日以後、乳幼児向け玩具の製造や輸入を行う事業者は「事業届出」が必要になります。
これは、事業所がある所管の経済産業局に届出を出します。
中部圏であれば、中部経済産業局(中部経済産業局長あて)というふうですね。
この届出は「許認可を得る」という類ではないので、個人事業主でも法人であっても届け出に際して必要な免許などはありません。
一方で届出には、氏名や住所、取り扱う玩具の仕様(型式)の登録に合わせて「損害賠償措置」についての書面(損害賠償責任保険契約の書類(写し))が必要になります。
つまり、製造事業者が事故に対しての補償体制ができないと、届け出が受理されないということです。
逆に言えば12月25日以後に製造された乳幼児玩具のユーザーは、何かしらの製品事故が起きたとしても、製造者からの補償を受けられる環境ができていることになります。
子供PSCマークで安全性の高い製品であることがわかる

〇の中に、にっこりスマイル顔の上にPSCと書かれたマーク。
これを「子供PSCマーク」と呼びます。
12月25日以後に製造された乳幼児向けの玩具はこの〇の形のPSCマークを表示して販売しなければいけません。
子供PSCマークが付いているかどうかで「その玩具が技術基準に適合していること」や「事故への補償がされている」といったことが、消費者には一目でわかるということですね。
ちなみに、似たマークに◇の中に、にっこりスマイル顔のPSCマークもあります。そちらは「子供用特定製品かつ特別特定製品(ベビーベッド)」用のマークで別物になります。製造事業者さんは間違えないように気を付けましょう・・※ PSCは、Product Safety of Consumer Productsを略したものです。

新しい規制はいいことばかり・・?
この新しい規制、消費者の目線で考えると、より安全な乳幼児玩具が流通するようになって、とても良いと言えると思います。子供PSCマークというわかりやすい印が付くことで、消費者もおもちゃを買うときの判断がしやすくなります。これらは、新しい規制のメリットと言えるでしょう。
一方で、これらの規制はおもちゃを製造する事業者にとっては「コスト」や「手間」としてのしかかってきます。特に木のおもちゃを作るような事業者は小規模であったり、個人経営でやっているところも多く「規制が始まるのであれば、うちはおもちゃ作りを辞めてしまおう」という声も既に上がっています。
けして大きなメーカーでは無いけれど、ユーザーの声を聞きながら、良いおもちゃを作っていた事業者さんが、今回の規制を前に「今後、どのようにしておもちゃを作っていけば良いのか・・?」という難題に直面しています。
これを読んでいるあなたが、おもちゃを買ったり、使ったりするユーザー側であれば、今回の規制は「喜ばしいこと」と捉えてもらえば良いと思います(規制対応のため、おもちゃの値段は前より少し高くなりますが)。
一方で、乳幼児玩具の製造事業者にとっては、この規制のところどころに現れる「わかりにくさ」がおもちゃ作りへのモチベーションを下げさせてしまっているように感じています。
以後、シリーズとして何本か書こうと思っている記事は、そんな「規制のわかりにくさ」「規制との付き合い方」について、私なりに勉強してきたことをもとに書き連ねてみたいと思います。
※ここからの話題は「主に木のおもちゃを作る人」に向けた内容になります。


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